フォーカシングの発見

 フォーカシングは、カウンセリングに関する研究の中で発見されました。その研究結果が示したのは、カウンセリングの初期の段階で、クライエント(来談者)の様子から、そのカウンセリングがうまくいくかどうかを予測できるということでした。成功のカギは、クライエントが自分自身の体験そのものに直接意識を向けるような場面があるかどうか、ということでした。たとえば、「そのことは私にとって、うーん、何と言ったらいいのかな・・・」という言い方は、言葉では表現しにくい何かの「感じ」に直接意識を向けていることがわかります。このように自分の体験そのものに直接意識を向けるクライエントとのカウンセリングはうまくいくことがわかったのです。

 では、そのように自分の体験に意識を向けることをしていないクライエントにとっては、カウンセリングを受けても意味がないということになるのでしょうか。
 この研究に取り組んでいたジェンドリンは、そこであきらめることをしませんでした。自分の体験に意識を向ける能力は、人間が生まれながらに持っているものであり、今まではそれを使っていなかった人にも、技術として教えることができることを発見したのです。ジェンドリンは、この技術を『フォーカシング』と名付けました。

フォーカシングでできること

自分の悩みを扱う

 フォーカシングはもともとカウンセリングの研究から発見されたものなので、もちろん悩みや過去のトラウマなどを扱うための強力なツールとなります。
 良いところはいくつかありますが、たとえば、普通のカウンセリングと違って、悩みの内容については話す必要がありません。その悩み全体の『感じ』に意識を向けることができれば、それでOKです。また、ある程度やり方がわかれば、自分ひとりでもできるので、セルフケアの能力を高めることができます。

自分らしく生きる

 自分らしいとはどういうことか、頭で考えても、なかなか答えが見つからないのではないでしょうか。しかし、自分自身がより良く生きるためにどんな方向に向かえばいいのか、身体は知っています。身体の知恵を借りることによって、より自分らしく、あるがままに人生を生きられるようになるのであれば、ほんの少し立ち止まって(つまりフォーカシングをする時間をとって)、ゆっくりと身体の声に耳を傾けてみるだけの価値は十分にあるはずです。

対人援助者として

 対人援助にかかわる者として大切なことの1つに、受容的・肯定的な態度で目の前のクライエントに向き合う、ということがあります。フォーカシングでは、自分自身の『フェルトセンス』と向き合うことを通じて、クライエントと向き合う姿勢を磨くことができます。
 また、「何だかもやっとする」など、支援者として感じる『フェルトセンス』にも上手に向き合うことができるようになり、自分で自分をメンテナンスできるようになります。

心理臨床家にとって

 フォーカシングは、他の様々な心理療法と対立するものではなく、むしろ様々な心理療法にフォーカシングのエッセンスを統合することが可能です。フォーカシングを知っていることで、臨床の幅は広がるでしょう。自我状態療法(EST)、内的家族システム療法(IFS)、ソマティック・エクスペリエンシングⓇ(SE)等の心理療法とも相性が良く、これらの心理療法を学ぶ際にもフォーカシングは強力な基盤として役に立ってくれます。


さらに詳しく知りたい方へ

The International Focusing Institute

The International Focusing Institute(国際フォーカシング研究所)は、フォーカシングとその根底にある哲学を実践し、教え、発展させるグループや個人をサポートするための、国境も文化も超えた国際組織です。(ウェブサイトより和訳して引用)
 フォーカシング・トレーナーなどの資格は、国際フォーカシング研究所が認定しています。
 ウェブサイト上では、有資格者を検索できるほか、英語ではありますが、フォーカシングに関する膨大な情報が掲載されています。

日本フォーカシング協会

 日本フォーカシング協会(Japan Focusing Association)はフォーカシングを楽しみ、それを個人的成長体験や臨床活動及び学術研究に役立てる人達のためのものです。(ウェブサイトより引用)
 ウェブサイトには、国内のワークショップ情報や、国際交流の情報などが掲載されています。会員になると、ほとんどのワークショップで参加費の割引が受けられるほか、年4回発行のニュースレターではフォーカシングに関する情報や記事を読むことができます。